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アンボス・ムンドス/著者:桐野夏生
7つの短編集。
「どうせ行くのなら、二度と行けない遠いところ、地球の裏側にしよう。」と不倫していた私と小学校の教頭・池辺が夏期休暇を利用して、誰も自分達を知らない土地・キューバへと旅立った。池辺には妻も娘もおり、人目を忍ぶ密会を余儀なくされていたが、人生でたった一度思い切った事をしようと旅行を計画したのだ。
両方の世界という意味の「アンボス・ムンドス)という名のホテルに泊まり人目をはばかることなく夢のような日々を過ごして帰国した直後、世間の非難の嵐が私と池辺を待っていた。
私が担任するクラスの女の子の不慮の死。連絡が同時に取れなかった私と池辺の不倫関係は周知の事実となる。
しかし、その事故には悪意が見え隠れし、それを探っていくうちに私は信じられない事実に気付く。(表題作「アンボス・ムンドス」より)
待ちに待った桐野夏生の新刊。期待して読んだのだが残念な結果に・・・。いつもの“あの”物語の吸引力が弱かった。読み始めたら最後まで気になって一気に読みきってしまうという事は無かった。短編集だからか、とも思うがそうでもない。
桐野夏生の作品を読むと、女性の描き方のまがまがしい程の毒に当てられ、良くも悪くも心に残るのだが今回はそのまがまがしさがない。
唯一、それがあるとすれば表題作「アンボス・ムンドス」で登場する小学生の女子である。幼い頃から女には女特有の毒がある。それは幼かろうが持っている。しかしまだ鋭さが足りない。幼さゆえの残虐性はあるが、彼女達はそれを過去の思い出として浄化し、その性質をうまく隠して生きていくのではないかと想像できる。
私が桐野夏生に求めているものはそれではない。自分の持つ毒に気付き、その毒と対峙し、生き方を変えていく女性を描く、その事を求めている。自分もそうなのかもしれない、自分もその毒を持っているのかもしれない、あり得ない状況設定なのにそう思わせてしまう説得力が桐野夏生の作品にはある。決しておもしろくないのではないのだが残念な気持ちが残る作品である。それ程に私は桐野夏生という作家に期待している。