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冷たい校舎の時は止まる(上・中・下)/著者:辻村深月

 センター試験を直前に控えた冬の大雪の日、深月を含めた進学校・青南学院高校に通う三年生の8人は校舎に閉じ込められてしまう。

 来る時にあいた玄関は開かず、窓も開かない。壊す事も出来ず、他の生徒も先生も来ない。完全に閉じ込められてしまった8人。

 話し合っていくうちに8人はある事に思い当たる。学園祭で自殺した友人の名前が誰一人思い出せない。死んだのは誰なのか?8人を閉じ込めているのは、自殺した一人なのか?その自殺について思い出そうとする8人だが、一人また一人とその世界から消えていく。

 不安と恐怖の中、彼らは必死で思い出そうとする、忘れてしまった友人の名前を・・・。

 しかし、思い出せずまた一人消えていく。

 上・中・下と分かれており、読み始めるのに二の足を踏んでしまいそうになるのだが、いったん読み始めたらあっという間に読めてしまう。

 この物語には大きな謎がある。それは自殺した友人は誰なのか?という事である。それが気になりどんどん読み進めていくのだが、途中途中で語られる閉じ込められた8人の個人のエピソードもおもしろく更にどんどん読み進めてしまう。

 自殺した友人の名前を思い出そうとする過程で、誰にも打ち明けた事の無い悩みと向き合う事になり、そのエピソードが人から見たら些細な事なのだろうが、悩む気持ちはとてもよくわかるものだった。

 自殺した友人に関してはけっこう早めにわかってしまい、閉じ込められた理由についてもすぐわかった。(しかし理由に関しては男性には理解しづらいのではないかと思え、女の人ならではの考え方だなぁと思うものだった。)ミステリーにおいて犯人がわかりやすいものには、わりかし辛めの点をつけてしまう私が、 ★4つという高評価なのは一つ、完全にだまされていた事があったからだ。このための伏線はいたるところにはってある。思い返してみると、ああーっこれはこういう事だったのかぁと思う箇所はいくつもあった。

 伏線をはりめぐらせ、さしはさまれるエピソードもおもしろく、読後感も良い作品なのだが、たった一つ気になる点があった。それは登場人物の一人が作者と同姓同名な事だ。たったそれだけの事が、なんとなく物語りにのめり込むにくくさせるのだ。作者と同じ名前という意味について考えてしまい、余計な邪念にとりつかれ、どっぷりとはまり込めなくなる。何かの伏線かなぁとも思ったのだが、そういったわけでもない。だったら違う名前でも良かったのではないのかと強く思った。

 しかしデビュー作でこの出来栄え。今後とても期待できる作家だ。

 蛇足だがこの作品、是非3冊並べて表紙を見てみる事をオススメする。