This page書評の泉 TOP > 暗いところで待ち合わせ/著者:乙一

暗いところで待ち合わせ/著者:乙一

 事故で視力を失い、たった一人の肉親の父も失って一人で孤独に暮らすミチル。たった一人の友人を除いて訪れる者も無く、暗闇のなかで常に一人で生きているミチルだったが、ある日自分を包む暗闇の微妙な変化に気付く。誰かいる、しかし身を守るため気付かぬふりして過ごす事に決める。

 家族から離れ、職場の同僚からも距離をおき孤独に暮らすアキヒロ。ある日同じ駅を利用する職場の先輩がホームから突き落とされて死んだ。その先輩と仲がうまくいってなく、ホームにたった一人でいたアキヒロは犯人として追われる。そんなアキヒロの目に映ったのは目の見えないミチルが住む家だった。

 ミチルに気付かれないよう、アキヒロは物音を立てず息をひそめ居間の片隅で暮らし始める。

 孤独な二人の奇妙な同居生活は、二人を変えていき・・・。

 乙一は語り手選びが秀逸である。今回は人の目が怖いと感じている二人である。そしてその二人が相手の一挙手一投足に戦々恐々としながら一つの家で過ごす。そしてお互いの存在に気付き始め静かな交流が生まれる。言葉は決してかわさない。一人は目が見えないので姿を確認する事もできない。でもお互いを思いやる交流は確かにある。その描き方がうまい。

 読者はそんな交流に心を穏やかにされつつ、物語は半分くらいだけどこの後どんな展開をさせるんだろうと余計な心配をし始めながら読み進めていると乙一は物語に別の展開を与える。

 サスペンス調の恋愛小説のようなものから一転してミステリーになるのである。そして前半部分に様々な伏線がはられていた事に気付く。なるほどなぁと思わず感心してしまう。

 しかし最後は『うまくまとまりすぎているなぁ』というのが本音である。非常に残念な点だった。他人との距離の取り方がわからず苦労している二人に用意されているラストはこうじゃないのかなぁと思っていたら、やっぱり・・・。最後まで期待を裏切り続けてほしかった。