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震度0/著者:横山秀夫
阪神大震災の朝、遠く離れたところにあるN県警本部にも激震がはしる。たった一人の警察官の失踪、だがその失踪した不破警務課長は県警の幹部であり上からも下からも人望が厚く、頼りにされていた。なぜ不破はいなくなったのか?事件?事故?本人の意思?
様々な思いを抱え、様々な推測をする県警の幹部達。そこには不破の安全の心配より、組織としての対面・保身を心配する気持ちばかり。相手を出し抜きたい、相手に知られたくない、そんな気持ちが働き情報を小出しにするばかりで、捜査を進めようという気持ちは少ない。
果して、不破はどこにいってしまったのか?組織の対面は護れるのか?
久しぶりの横山秀夫の長編。短編集でも登場人物の性格を見事に描ききる能力は、この長編でもいかんなく発揮されている。
遠く離れた神戸での大地震と同時に起きたN県警幹部の一人の失踪。磐石に見えた組織の脆弱さを露呈し、隠された個人の秘密がどんどん明るみになっていく。
キャリア・ノンキャリア、捜査畑・管理畑、相反するものが微妙なバランスで保っていた組織としての対面が、幹部の失踪に対する考え方の違いからどんどんそのバランスを崩し、対面を保てなくなっていく。
考え方の違い、それは組織に対しての個人的な考えの違いからきているものでなく、その幹部との間にある個人的な秘密があり、いろいろな思惑により幹部失踪の原因追及の糸口になりそうな事も黙って胸に秘めてしまい、それにより更に対面は護れなくなっていく。
更にこの作品の人間関係の描き方のすごい点は警察幹部の面々の内面だけを描いているのではなく、妻達の内面も描ききっている所である。狭い公舎という、普通の企業で言うならば社宅に住む妻達も、年齢や経験・人望に関係なく、夫の職場での立場つまり地位が生活に色濃く反映される。お互いに相手をうらやみけん制し合う。
息が詰まりそうな場面が続くが、決して読み進める事がつらいという感じではない。この悪循環に陥った組織にどのような結末を持ってきてくれるか気になりどんどん先を読んでしまう。
結論を言ってしまえば、いつもの爽快感(ガッツポーズが出るような)はないが、感慨深い終わり方で良かった。『横山秀夫の作品』という期待を裏切らない作品であった。